第6章 その身体に刻まれた過去
虚空を打つ乱れ打ちは青い残光と共に
追ってきた鬼を叩きのめす。
地に埋め込まれていくようにドガドガと轟音をたて
鬼の断末魔が響いた。
その後、鬼が失神したのか声が聞こえなくなり猗窩座の攻撃は終わった。
「やるじゃないか。楽しかった。」
そう言いながら、攻撃の威力でへたりこんだ桜華を引っ張りあげ立たせるとその腕にそのまま抱き寄せて頭を撫でた。
「お付き合いしてくださって有難うございます。」
「だが、これからは程ほどにしろ。俺たちには味方はいない。追われる身の上だと言うことを忘れるな」
「はい。善処します。」
その後、再生能力を失い気絶したままの鬼を鎖でぐるぐる巻きにして、人通りがない山の入り口の高い木にくくりつけてその場を離れた。
「急げ。嫌な予感がする。」
いち早く別の鬼の気配を感じて桜華を抱え込んで暗闇に入っていった。
先ほどの戦闘の場所にその場に相応しくない長身の血を被ったような服と帽子の男。
衝撃跡を見つけ持っていた扇を口の当てて観察していた。
「ん?おや?
これはこれは………」
張り付けた笑みが空虚。
纏う空気は凍るような闇。
「猗窩座殿の攻撃の跡だねぇ。
しかも対象がどういうわけか鬼。
ほんの僅かに藤の花の香りとちょっと変わった稀血の女の子の香り」
「まぁいいや。もうすぐ日の出だ。」
そう言いのこして男は街の方に消えた。