第6章 その身体に刻まれた過去
先ほどの男性から教えてもらった道を歩き進めると、硝子製、造花、つまみ細工など透明感が高い色合いが多い店。
「さっきの男、なかなか見る眼があるな。」
「そうですね。わたしの好みです。」
「ならよかった。」
二人が品定めをしていると20代前半くらいの女性店主が父親であろう職人風体の男と声をかけてきて対応した。
店の雰囲気も合間ってで優しい波動を感じていた。
女性は妹に選ぶように色々あてがっていく。
「彼、旦那さん?凄くお似合いね。
二人ともここら辺りではなかなかお見かけしないくらい素敵な雰囲気出してるわ。」
「いえ、思いは通うておりますが、まだそこまでは……」
照れながら桜華はそう答えた。
「羨ましいわぁ。
あ、えっとね、最近、変な失踪事件が多発してるから気を付けて。
なぜか、恋人連れの女性が狙われてるみたいだから。
彼、ガタイもなんだか良さそうだからしっかり守ってもらうのよ。
あまり日を跨がない方がいいわ。」
「お心遣い有難うございます。」
女性と話してると猗窩座が、少し大きめの真っ白な椿に小さなつまみ細工をあしらい銀と白の雪の房のついたの簪を持ってきた。
「髪の色と着物に合う」
といってあてがうと女性店主が「あらぁ」と感嘆の声を漏らした。
「さすがですね。よくお似合いで!」
「では、これでお願いします。
いいのですか?」
「あぁ。貰っとけ。」
男性の方が会計をしている間に、女性が桜華の耳に手をあてがって
「椿の花言葉は『常にあなたを愛します』よ。そして白は『至上の愛らしさ』『完璧な美しさ』っていうの。
お嬢さんにメロメロね!お幸せに♡」
といって微笑んで、男性と共に並んで見送りをしてくれた。
自然に繋がれた手。桜華は先程聞かされた花言葉のせいでほんのり頬が色づいていた。
「猗窩座、ありがとう。大切にします。」
「あぁ。」
お金の出所は何となく想像ついていたのと、贈り物の金額を聞くのも失礼だと思い、その事は何も聞かなかった。
ただ、移動しながらでも得られる仕事をしていかねばと密かに思うのだった。