第2章 無意識の中で
暫く走って滝の音が響く古い民家。
少し歩けば見晴らしがよく、遠くには街もあり、始めてきたときは花火が上がっていた。
なぜか、花火が上がるのを見てここの近くから離れられず数日前からここの近くを住み処としている。
女にこびりついた男の腐った臭いを早くとってやりたく、着物を取っ払って滝壺へと女を抱き抱えたまま入った。
女は酷く振るえていたが気にしない。
念のために羽織で猿轡をして舌を噛まぬようにした。
何でか知らない。
でも、こうしてやったらどうなるって人間の介抱のしかたにそれほど迷いがない自分に驚いている。
「どうしてしまったんだか…。」
思っていた言葉が声になって漏れた。
女を洗ってやったあと、家の中に入り体を拭いてやろうとしたときに思い出す。
こんなに女を見たり触れたりすことが鬼になってからはじめてだということと
何の躊躇もなく、後先考えず脱がしてしまったこと
自分がしたことを思い返しただけで体中の血が顔に集まってくるのを感じた。
何をしている…。
この俺が…。
しかし、ここまでしておいて辞めるのは更に違うことだと思いなおし拭いてやる。
綺麗にしてやると、骨張って痩せこけ、やつれていてるのが解って胸が痛む。
だが、それでも月光に照らされた女のからだは
艶めいて絵画のように美しかった。
女がなにもしない俺を不振がってかゆっくりと顔を上げた。
少しだけ表情が柔らかくなり、目尻が下がる。
その姿が心臓の奥を揺さぶり目が離せない。
何かに操縦されるように意思というものがぼやけ、女の頬に触れたい衝動に駆られた。
「くしゅっ!」
「...っ......わるい。寒かったな。」
女のくしゃみで我に返り手を引くと、荷物の中から、夜街を移動するときのための着物をとりだし着付けてやった。
体中にある腫れや、切り裂かれた傷を見ては、胸が切り裂かれるように痛むのはなぜだろうか。