第5章 傷と罪は共に背負うモノ
血が欲しいと言われても、
その先は自分の血しか欲しなくなる。
依存性はないにしても、飲み続ければわたしの血しか受け付けなくなる。
果たしてそれで大丈夫なの?
生きていけるの?
ましてや、わたしの血で猗窩座を人間に出きるのだろうか……
いろんな思いや考え、疑問が溢れて止まらないし、
いろいろ不安でたまらない。
ふと『人間に戻して差し上げるお手伝いをさせていただきたいのです。』と言ってた恋雪さんの話がよぎる。
彼女を信じてもいいんだろうか。そもそもまだ、彼は人間だった頃を映像や音で聞いているだけで思い出してはいない。
でも、聞いてしまって思い出せばどうなるんだろう。
「どうした?」
急に押し黙ったわたしを、具合が悪いのかと心配した面持ちで顔を覗いてくる。
「一つだけ、一つだけお聞きしてもいいでしょうか?」
「ん?」
「猗窩座は、戻れるとしたら人間に戻りたいのですか?
わたしの血の力は自分自身でよく解っていないし、情報はその本しかないのです。
下手をすれば死んでしまいます。
それでも、わたしの血がよろしいのでしょうか?」
「君が老いていって、俺だけ不老で衰えないのは寂しい。
それに、他の人間に触れるだけでも最近は嫌悪感を抱いてしまって人を喰らえない。
血さえ飲んでいればいいのだが、知らない奴の皮膚に口をつけることもはきそうな位の嫌悪感がある。
すまない。俺のわがままだ。」
何だか解らないけど、
わたしが老いるまでずっと一緒にいる前提をさらっと言われて
わたし以外に口をつけることができないと遠回しにいわれた気がして、顔が火照ってしまった。
今、そういう意図でいってる様子ではないのにあたふたしている自分が恥ずかしい。
思わず俯いてしまった。
あぁ、でもそういうことだ。
この人と逃げ続けるということは……