第5章 傷と罪は共に背負うモノ
「鬼舞辻の血の呪いはどうなるのです?
何処にいても監視されて気分しだいで殺されてしまいます!」
一人にしないとは言ったものの一番の障害は鬼舞辻から猗窩座の全てが筒抜になってしまうということ。
全ての鬼はあの男に監視されている事を父に聞かされたことがあったように思う。
情報源は数少ない支配の呪いを断ち切ったという医者鬼かららしいが詳しいことは聞かされてはいない。
「君は本当によく知っているな。
だが、薄々気づいているだろう?
俺が君の側にいるとどういうわけか
あのお方の支配から外れるようだ。
あのお方の直接の監視がなければ殺されもしない。」
言われて彼が自分の意思でわたしから離れていく以外、あの男が発するような上弦の壱を越えるような強い鬼の波動を感じたことがなかった。
沢山の鬼を一度に監視するのは困難だとして、鬼の中の最強クラスの強さと信頼がある十二鬼月の鬼の上弦である彼は監視することが少ないにしても
この光景も話も、もし筒抜だとしたら確実に殺されているといってもいいのかもしれない。
だとすれば、逃げたとして、わたしたちが少しでも遠くに離れれば猗窩座は鬼舞辻に見つかり殺されることは十分にあるということ。
わたしも無力な上に追われる身になれば護衛もいない以上見つかれば守ってくれる人などおらず、簡単に殺されてしまう。
それが理解できると、猗窩座のために身を引くことはもうどちらのためにもならないことが理解できた。
「俺は武力で君を守る。
桜華は血の力で俺を隠して欲しいんだ。」
「はい。」
「だが、匂いと気配で追ってくる可能性もある。
前回、黒死牟が君を訪ねて来たときもそうだ。」
「匂いを消すにはどうすれば?」
「ひたすら遠くへ逃げるしかないだろう。
黒死牟から聞いたこととそこに置いてある書物を読んだ。
ここからは勝手な推測だが、君の血は鬼に対して反抗するような何か特別な力があると思っている。
貧血にならん程度でいい。君の血がほしいんだ。
僅かな可能性だが、俺は君の血に関して危機感をまるで感じない。
アイツは極度に嫌っていたようだがな。
その感じ方の違いに、俺にはその血への順応性があると思っている。」