第5章 傷と罪は共に背負うモノ
そこからの映像は、写真のような白黒
恋雪さんの心情なのか
彼女がなくなって見守っている状況だからかわからない
驚くほど静かでゆっくりと残酷に時間が過ぎるのを感じた。
狛治が夕日が沈む前に帰ってきた
離れていても雰囲気で何かを感じガタガタと震えては足も進まず声も出ない
そんな様子で突っ立って動けない狛治に気づいた恋雪の医者が駆け寄った。
狛治は青ざめて震えが収まらず、脂汗がだらだらと顔を這う。
「狛治君!!やっと戻ったか!
…………………恋雪ちゃんと……慶蔵さんが!!」
「誰かが井戸に毒を入れた………!!
慶蔵さんやお前とは直接やりあっても勝てないから、あいつら酷い真似を………!
惨たらしい………
あんまりだっ…!!
恋雪ちゃんまで殺された!!」
言葉を失ったままふらふらと、医者に支えられながら、重い雰囲気の道場の中に足を踏み入れた。
師範と弟子として、共に汗水滴し稽古したこと
恋雪を支えた思い出
師弟関係から本当の家族になる誓いをたて
明日祝言の日取りだった。
狛治はよろめきながらも医者に支えられて二人が眠る道場にたどり着いた、
倒れ込むように膝をおり
恋雪の肩に触れた。
冷たさに触れてビクッと肩を揺らした
「…………おい。かえっ………たぞ……。
わりぃ。…………また……せたよな。
外、寒いから、……冷えてるん………だよな!」
「おい…………返事……しろよ。
恋雪……。」
狼狽えた狛治の姿に医者もボロボロと涙を流した。
狛治はガタガタ震えた手で恋雪の顔にかかった布を静にとって恋雪の頬に触れた。
「苦しかったか………?痛かったか…………?
間に合わなかった………。
守ってやれなかった………。」
前に束ねられた手を包むと、その手に涙が滴る。
「おい………」
そして恋雪を抱き起こして縋り付くように抱き寄せた。
「うっ……あ……ああああああ!!」
泣き叫ぶ声はその場に居合わせた役人や近所の人たちの心も抉ってしまう程の悲痛なもの。
ようやく掴みかけた幸せが手のなかで音をたてて打ち割られた衝撃で狛治の何かの糸が脆くちぎれた。