第5章 傷と罪は共に背負うモノ
それから
半年後に祝言を迎えることになり、
3人で様々な準備をした。
恋雪が世話になっていた医者と薬屋、その他に付き合いがあったものたちも呼んで、
恋雪の母の白無垢と、狛治の紋付き袴も届きいよいよだという日、
狛治は一人自分の父親に、祝言の報告を手土産に墓参りに向かった。
夕刻に帰ると言伝てして。
狛治を見送り、親子二人で、母親の墓を尋ね祝言の報告をし、帰路に着いたのは昼前のころ。
二人分の食事を共に作り、共に食したあと
親子水入らずの時間になるはずだった。
「ゲホッ!………ゴホッ!」
ガッシャーーーーーーン
「…………っ!!恋雪ィィィィ!!」
土間で倒れ吐血と痙攣、そしておとを聞き付け駆けつけた慶蔵の様子もおかしい。
「お父さん………もちそうにないから、ゲホッゴホッ!
狛治さんにっっゲホッ!伝えて…………!」
「だめだ!!死んではだめだろ!先生のところに連れていくから…………うぅっ!狛治が繋いだ命を諦めるな!」
「ごめんなさい………!ゲホゲホッ!ゴホッ!だけど、伝えて…………!お願い!
狛治さん、二人ともいなくなったらまた罪を重ねてしまうかもしれないから…………!」
恋雪は父親も毒で苦しんでいることをわかっているようだった。
もしかしたら二人とも間に合わないとわかってたのかもしれない。
だから、容態が自分より軽い父親に最後の言葉を残したかったのだと
「狛治さんは気づいてないけど、彼はたくさんの人の心を勇気づけ元気にしてきました。
苦しくて暴れてしまうことがあっても思い出してほしい
わたしは、誰も恨んでない。
後悔のない人生でした。
狛治さんを残していってしまうこと以外は
だから、わたしの事で罪を重ねてしまうことは望んではいません。
狛治さんが、
自分の事を責めすぎないで幸せに生きてくれることが望みです。
幸せでした。
ありがとう。」
恋雪は医者の家に向かう途中に命を落とし
慶蔵も医者の懸命の治療も空しく昼過ぎにこの世を去った。
遺言は伝えられることなく散ることになった。