第5章 傷と罪は共に背負うモノ
夢の中では
それから3年の月日が流れた。
恋雪は寝込むこともなくなり
家事もこなすまで元気になった。
狛治18歳
恋雪16歳
この頃もそれくらいの年齢は立派な大人であるし、将来を考えていく時期でもあった。
そんなある日、狛治は慶蔵に呼ばれて、稽古場に招かれると、そこには顔を少し赤らめた恋雪も座っていた。
そんな二人を見比べながら二人の前に腰を下ろすと、慶蔵が話を切り出す。
「この道場を継いでくれないか、狛治。
恋雪もお前の事が好きだと言っているし。」
「………は?」
拍子抜けした声が思わずこぼれた狛治。
恋雪がそうであったようにここに来るまで罪人だった狛治も自分の未来が想像できなかったし、ましてや罪人の自分が誰かに好かれるとも思っていなかった。
狛治が恋雪を見ると、真っ赤になって恥ずかしげにもじもじしている姿が可愛らしい。
つられて狛治も赤面になって俯いた。
「道場も、娘もよろしくお願いしていいか?」
その言葉にはっとして師範の前で姿勢を正した。
恋雪は狛治の返事をどぎまぎして待っており
慶蔵は優しい眼差しを、師範としても父親としての気持ちも織り混ぜた眼差しで見つめている。
勢い良く頭を下げてその状態で返事を返した。
「はい。命にかえても師範が築いた道場と恋雪さんを大事に守り抜いていきます。」
満開の桜のような笑顔で喜ぶ恋雪と、その様子に微笑んで娘の肩を抱く慶蔵
それは狛治にとって初めて訪れた晴れの日だった。
そしてその1週間後、いつの日か約束していた花火大会へ二人は出掛けた。
繋がれた手は固く握られていて、優しく幸せそうに手を引く狛治とそれに応えて嬉しそうに微笑む恋雪の姿。
川岸に着くと花火が上がり始め
二人は夜空に咲く花火を見上げた。