第16章 因縁の終焉
背後、氷像がカナエさんを襲うのを感じて、わたしの周りを氷の蔓が巻こうとする。
寸で避けてカナエさんのところにたどり着いたけど、ふらつく…。
「桜華さん…」
「けがはない?」
体が燃えるように熱くて重い…。
だけど…
立たなきゃ…
「ムッキっ!!ムッキっ!ムッキっ!」
小さい愉快な声…。
あれ…これって…
天元さんのムキムキ鼠さん…
わたしの刀扇…
「どうしたの?疲れちゃったのかな…
まだまだ、猗窩座殿はこないようだけど…」
「あなたの扇、お貸しいただいてありがとうございました」
「あれ…もういいの?疲れてそうだけどなぁ…」
楽になっていいんだよとでもいいそう。
そうよね。
わたしが、もっと調子が良ければもっと動けるはずだし、その頸はカナエさんとなら斬れたかもしれません。
どちらも負傷しなければい。
消耗すれば、カナエさんは少しは戦えるまでに回復するはず。
でも、きっとあと少し…。
だから…
「主人がくるまで、今しばらくお付き合いくださいませ」
ふらつく体を奮い立たせて立つ。
日の呼吸は熟練するほど体力を消耗しない。
力の大きさが大きいほど後でこうして反動が来る。
天元さん、ありがとう。
ムキムキ鼠さんのお陰でもう少し力が出せそうです。
「俺は好きだぜ…。踊れる強い女の子。傍に置いてみたいけど残念だ…」
「えぇ。こちらからも丁重にお断りいたします」
あぁ…
やはり、自分の武器となると落ち着きます。
そして、やはりわたしもあの鬼に嫌悪感があります。
けれど…
彼もあなたと同様に、悲しい鬼ですね。
来世は人間として人間らしく生きることを阻害されませんように…
「結の呼吸ー日月結びの舞ー」
右に太陽、左に月
二つの神を産んだ神舞いの型
「壱ノ型・イザナギの神産み」
懐からの二対を振り上げるように斬りつける。
童磨の肘から下が削げ飛んだ。
「不思議だね…同じ攻撃なのに、右で斬った方が再生が遅いね…」
反転し宙に舞う桜華は
依然として恍惚とした表情を崩さず両腕で体を抱くような構えの位置が己の頸の位置にくる。
「血鬼術・枯園垂り」
「弐ノ型 ・天照、月詠の戯れ」
頸を断つ動きを予知した童磨は、桜華の両手を交差させるように繰り出した技を、寸で遮る。