第16章 因縁の終焉
「陸ノ型 日暈の龍・頭舞い」
閃光を放つ熱が幾重にも輪を描いて小さな氷像を蒸発させていく。
「凄いね…!凄いよ君は…!はぁぁぁ…覚えておかなくちゃね…君が今まで出会ってきた鬼狩りで、一番美しくて鋭い技を繰り成す娘だということを…」
「これはどうかな?もっと…もっと楽しもう…!」
「血鬼術・寒烈の白姫」
周囲一帯を凍らせるような伊吹を氷の巫女が吹きかける。
「血鬼術・散り蓮華」
なるべく負傷したカナエに向けて氷の花弁を飛ばす。大きな技を出させればどんどん消耗するだろう…。
そして、もともとその娘は先ほどまで立つことすらできず俺に抱えられなければ移動もできないような体力だった。
すぐに消耗するだろう。
だいたい、ここまで強力な呼吸術で日輪刀でない分速さで補っているようなもの。
しかし不気味だ。
操り人形が舞うかのように殺気を感じない。
浮かべている笑みは苦しみの断片も見せない。
「弐ノ型 碧羅の天」
すぐにカナエの場所に駆けつけては壁になるように円を描き周囲の冷気を蒸発させた。
どちらにせよ、体力勝負な上に、日輪刀でなければ鬼の頸など斬れはしない。
所詮、あの娘は人間で、俺は鬼。
鬼である俺は、体力も無限で再生力は決して衰えない。
「伍ノ型 陽華突」
一息つく間もなく、彼女は俺の懐に潜り込む。
あぁ…速いね。
そして美麗だ…。
もっと踊りたいな…。
ただ…頸だけは斬らせないよ。
日暈の龍・頭舞いでほぼ消滅した結晶ノ御子の中から、かろうじて原型を残した二体の氷像が蓮葉氷を発動し、袖を引き裂いた。
危機に焦る様子もなく、舞に心をゆだねるように
笑顔は張り付けたものでもない。
内からあふれるそれは、この状況下において不気味なはずなのに、なぜ俺まで釣られて高揚するのだろう。
「血鬼術 蔓蓮華」
向かってくる敵は絞めて凍らせばよい。
「拾壱ノ型 幻日虹」
幻想を縛り、目の前で弾けて消えた。
残像。
凄く面白いね…。
燃え上がるような赤い目…
敵意はないのに細胞が反応する。
なぜ、人が死ぬような冷気を放っているのに、この娘は何ともないように…
そうか…
以前、黒死牟殿が言っておられたね…。
”痣者”
”日の舞”
即ち、彼女は俺の氷すら体で溶かしてしまうことが出来る。