第5章 傷と罪は共に背負うモノ
頬が時折くすぐったくて暖かい
時々暖かい雫が頬を伝うけど、わたしのじゃない。
触れたいのに手は動かない
抱き締められてるのかからだが暖かい。
時々息ができないくらい唇が暖かい
そして、
置いていくな
目覚めてくれ
一人にするな
と、懇願する震えた優しい声。
そしてその温もりが落ち着きを取り戻せば、頭を優しくふわふわと撫でられる感覚がすごく心地がいいの。
そちらへ行きたいのに
温もりを今すぐ抱き締めたいのに
涙を流すことしか許されない。
「もう少し待って」
と時折聞こえる鈴蘭のような可愛らしい女性の声。
見えなくて聞き覚えのない声は
脳のなかで反響して、染み渡るように聞こえてくる。
でも、この世界に彼女もわたしも映っていない。
そのわたしを呼ぶ声は
どこか悲しげで
どこか儚げで
無念や虚しさを感じさせるような声色だった。
返事を返したくてもそれを許されることはなく、ただ黙ってその映像を見るようにと女性からの便りなのだと思った。
目覚めるのはいつだろう。
今すぐ起きなきゃいけない気がするのに、
そう思えば先ほどの声が響いてくる。
でも、知らなきゃいけない。
これからのわたしにとって大事なことなはずだから。
映像はまた
流れるように進み
のどかないなか町へと変わっていった。