第16章 因縁の終焉
「もう、お喋りはお済でしょうか」
桜華は、鉄扇を構えたまま、静かに言い放った。その言葉には、もはや童磨への恐怖は欠片もない。
「いいよ。俺の体もほぼ完治した。どこからでもかかってくると良いよ」
「では…『前座』として戦い舞わせていただきましょう」
かつて背中にあった痣はどういうわけか一度引いた後、顔に現れたらしい。
あぁ…なんて誇らしくて心強いのでしょう。
父も兄もわたしと共にあるような痣。
この痣に甘んじることなく、悪鬼を葬り去り、わたしはここでわたしの剣技を完成させる。
呼吸術『結の呼吸』
一つしかない、しかも日輪刀ではない鬼の武器。
相手は鬼狩りをも凍らせる氷ならば月では心もとない。
呼吸を整える。
炎よりも高く熱を込めて........
「結の呼吸ー日の舞ー
壱ノ型・円舞」
日輪の刀でないため灼熱の炎は出ない。
だが、鉄扇に込めた熱が冷気を蒸発させて光を纏う。
閃光となって煌びやかに振り下ろされた軌跡を残した。
「…?!どういうことだい?日輪刀を持たない剣士など、今までなかったが…これは…」
童磨が受けた技は速さと威力は今までにないほどなのに、動作のひとつひとつに圧倒されて時が止められているようだった。
コマ送りに視線がこちらに向けられる瞬間に、灼眼が次の技を繰り出そうとしている。
「伍ノ型 陽華突」
「血鬼術・枯園垂り」
突き技が迫りくるのを間一髪で盾となる技を出して回避した。
桜華に異様な気配を感じた。
植物と対峙している無の境地、表情には柔らかい笑み。
「いやはや、聞いていたものとは全然違うね!これは楽しい…!」
かつてない感覚に身震いがする。
何故だろう、とても懐かしい感覚だ…
天女のように舞い狂う刃は、童磨が繰り出す冷気を蒸気と変えて体まで確実に届き始める。
激しい金属音が火花を伴い戦いの激しさを表す。
「凄いね…舞を基にしている分、体も柔軟で動きも早い…!
もっと踊ろうよ…!」
桜華の速さに合わせて速度を上げる。
そして、沢山の子どもたちを生み出せば…。
「血鬼術・結晶ノ御子」
貸した鉄扇の代わりの手と手元にある鉄扇で童磨自身を模した氷人形をだす。
複数で同じ技を出せば…