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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃/猗窩座・狛治】

第16章 因縁の終焉



童磨の姿は全身に貫通して向こう側の景色が見えるほどの傷を負う悍ましいものと化した。

それでも、好奇に満ちた眼球をカナエに向けて喋り始め、愉しげに口角を上げた。

再生を始めた傷口から、また血が滴り落ちる。

カナエは、最後の力を振り絞り、刀身を童磨の頸を目掛けて突き出した。


「でも、もう終わりでいいよ…」


童磨から流れる血はバキバキと鋭く音を立てながら氷の蔓と変化する。


蔓がうねり、赤を伴う蓮華が空間を舞った。


「血鬼術・蔓蓮華」


冷気を持って迫りくるそれを避けようと間一髪の判断で回避したものの、カナエは膝をついてしまう。



童磨が次の技を繰り出そうと扇を高々と掲げた。






上を見上げて息をのむ。


繰り出される技が止めを刺すものだと背筋が凍り動けない。








黒い影…



「血鬼術…」


振り下ろされる鉄扇
影は宙に舞いながら軽々と童磨の頭上から前方へ。





鉄扇を持つ童磨の手を手刀で側面から打ち叩き、勢いよく弾き飛ばした。


鈴割りと呼ばれるその技は、かつて童磨が一方的に『親友』であると宣っていた鬼の技。


がら空きになった童磨の懐へと、目の前の体が反転し、下から蹴り上げる。



冠先割



童磨は後ろによろけながら、その懐かしい技の連続に、別の好奇心が掻き立てられる…。



「わたしを殺められない限り、指一本触れさせません」



着飾れたままの姿の桜華が鬼の鉄扇を奪い取って低く構えていた。
後ろ手でカナエを庇うように。


「…ああ…」


好奇心に満ちた眼差しは、桜華に向かった。
手元に残っている扇で口元を隠して愉しそうに見つめている。

先ほどまで氷を扱っていた鉄扇。
皮膚が張り付くほどの温度を躊躇なく持つ手は闘志からか何も感じない。

「...桜華さん...!」

「カナエさん。我慢してって言ったでしょ…」

「ごめんなさい...」

カナエの震える声に、桜華は静かに微笑む。

「でも、ありがとう…。
初めてお会いしたころより、強くなりましたね…」

その言葉に、カナエの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
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