第16章 因縁の終焉
無数の鋭利なつららが頭上へと降り注ぐ。
反射的に間一髪で避けたものの、長く美しい髪をひと房はらりと落ちた。
それでもすぐに体制を立て直し、前へ前へとカナエは怯まず猛攻を続ける。
目の前の鬼がカナエにつららを降らせたとき、桜華の目の前に、衝撃で飛ばされてきた氷に目をやった。
もう一度視線を戦いの場に戻すとカナエが戦う様子は今が最高潮に達していることに気づく…。
__時間がない。
_____早く立て…!でも、刀扇がない。
___________いや…
童磨の手元を見て、桜華は目の色を変えた。
目の前の氷の破片に両手両足を縛られたまま身をひねり動かし、縛られたままの両手を懸命に伸ばす。
依然として激しい戦闘が続く。
「あれれ…そろそろ限界が近づいてきたかな?
綺麗な蝶の羽織まで斬り裂いちゃったね…」
童磨の声がひやりと背筋を凍らせた。
今までの柱も上弦の強さをこう表現している。
___柱が3人束になっても倒せない____
___上弦は一つ位が上がるだけでも段違いなほどに強さが異なる____
と。
__やはり、無理だったのでは…
___でも、あのまま屋根裏で見ていることはできなかった。
飛び出して、今戦っていることに一片の悔いはない。
「陸ノ型 渦桃」
カナエの周囲を囲い迫る冷気を粉砕したと同時に気を引き締める。
____ここで倒れてしまってはダメ…。
________もう、十分に時間は経ってる。
あとは宇髄さんたちが来てくださる。
桜華の事もご存じならば狛治さんも来てくださる。
繋がなければ…!!
「血鬼術・冬ざれ氷柱」
また…!
再び降り注ぐ氷柱の雨_______
避け切ったはずだった。
「うっ…」
足裏に激痛を感じて飛びのいた。
土踏まずのところ、ブーツを貫通して氷の刃が突き刺さる。
「あぁあぁ…可哀そうに…せっかく頑張ったのにね。
君が一人で来たということは、初めから負けるとわかったうえでの特攻だったのだろう?」
「痛いよね…つらいよねぇ…楽になっていいんだよ…?」
板張りを歩く靴の音が近づいてくる。
立たなければならない。