第16章 因縁の終焉
桃色の花の斬撃と金属のかち合う音が、張り詰めた空気を裂く。
舞うように太刀を振るうカナエを追うように童磨が表情を崩さずに鉄扇で冷気を放つ。
少しでも吸ったら、肺胞まで凍り付くほどの冷気…!
これが上弦の弐…強い!
今までの鬼が赤子だと思えるほどに…
「ほらほら…!俺に攻撃を当てて見てごらんよ。
次の技いっちゃうよ~!」
鉄扇を水平に構えるその眼は好奇心と狂気染みた眼差しでカナエに向けられる。
「血鬼術・蓮葉氷」
扇で払われた冷気にのせられた蓮の花が迫る。すぐさま反撃の技を繰り出す。
「弐ノ型・御影梅」
向かい迫る蓮の花を梅が散らすように斬撃が相殺する。
「お望み通り、攻撃を仕掛けましょう」
「壱ノ型・桜咲舞(おうさきまい)」
力強くしなやかに下から斬り上げ、連なる左右に刀身を入れ、その頸をねらった。
同時に童磨の血が舞うが、胴体に鋭く入ったものの頸は掠っただけ。
「凄いね!強くて大きな弧を描いていたよ。体が柔らかくバネのようだ…」
軽薄な笑みを浮かべるそれは、まだ余裕があるということ。
それを裏付けるかのように無常に斬撃の跡は何もなかったかのように修正される。
「そういえばさ、俺のところにも何人か女の子の隊士が訪れていたなぁ…。何人食べたっけ」
カナエの動きが止まる。
息が止まった。
当初の潜入調査は、今まで3度にわたって送った隊士からの連絡が途絶えての事だった。
「今、何と仰いましたか?」
童磨は過去を思い出すためか、こめかみに指をあてた。
しかしそれは血を流しながら奥へと貫いていく。
「君が今、髪に着けている髪飾りを見ててさ…。そういえば今まで俺に立ち向かってきた女の子たち、髪飾りが映えるような高い位置に結び目があったなぁ…て思い出したんだ」
怒りが腹の奥底で赤黒いマグマのように滾るのを感じた。
同じ蝶屋敷で働きながら稽古をつけていた継子…
楓
緑里
由紀奈…
わたしの先にここに送られた子たち…。
「やはり…そうだったのですね…。
もう彼女たちはいらっしゃらないと…」
「そんなことはないよ。今、俺の中で永久の極楽浄土にいるのさ…」