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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第5章 傷と罪は共に背負うモノ






ささやかな住民だけの葬儀も終わり、墓石に佇む狛治は、今まで読めなかった最期の手紙を読む。



そこにはこうあった。



『狛治へ

真っ当に生きろ。まだやり直せる。

俺は人様から金品を奪ってまで生き長らえたくはない。

迷惑をかけて申し訳なかった。』



手紙を読み終わると崩れるように地面に膝をつき、

父親の墓石を抱き締めて声をあげて泣きじゃくった。


「迷惑じゃなかった!

なんで謝るんだよ!

親父は何も悪いことはしていないだろ!」


薬は高くて真っ当に働いて稼げる額ではなく

栄養があるものを食べさせる金もない

貧乏人は病に倒れれば生きられない

そんな世の中に憤りをぶつけるように泣き叫んだ。





もう、守るものもいなければ、溢れかえる憤りや憎しみの感情など抑える必要はない。

いや、他に自分の無力さを嘆く場もなければ、受け止めてくれるものすら彼は持っていなかった。

狛治は世の中に当たり散らすように暴れ狂い

大人でも売られた喧嘩を買って打ち負かしては

それがまた罪として重なり、終には江戸所払いとなった。










桜華はこの時間、この時代の傍観者として見るているだけ。

何も手を出すことができない。

この世に干渉することなどできやしない。



ひたすら少年の悲しい過去を想い、涙しても


その視線をそらすことができなかった。


精神的に貧しい人ほど自分の事で精一杯。



そして、身の回りの人は皆同じような人で溢れる

だからこそ誰も手をさしのべてはくれない。

悲しい人間はいつだってそう。

一人で抗っていくしかないのだ。



目覚めたいのに目覚められない。

あなたはわたしに何を伝えたいの?



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