第5章 傷と罪は共に背負うモノ
奉行所での裁き。
百叩きの刑罰で、全身傷だらけ、骨も折れても精神は崩れないのは、
自分がいなければ最愛の父が死ぬ事への恐れなのか
少年は、刑罰の後も意識をしっかり保って、奉行の前に座らされていた。
「掏摸の入れ墨はもう両腕に三本。
次は手首を切り落とすぞ。」
「ハハ ハハハ!!」
「斬るなら斬りやがれ!
両手首斬られたって足がある。
足で掏ってやるよ。
どの道次は捕まらねぇぜ」
「僅か齢十一にして犯罪を繰り返し
大の男ですら失神する百叩きを受けてこの威勢」
「おまえは鬼子だ!」
罰を受けた少年は、重犯でありながらもまだ幼いためか数日牢に滞在し、
百叩きの傷や痛みをものともせず駆け抜け、父親の待つ家へと帰っていった。
少年を追うように場面は進み、
長屋に差し掛かると、少年は足を止めた。
少年の視界の先には役人と住人が群がっていた。
少年の父親の主治医の姿もそこにある。
少年に気づいた長屋の住人の一人が少年に慌てた様子で駆け寄る。
「狛治!!」
「お前さんがまた掴まったって聞いて、親父さんが首括って死んじまった!死んじまったよォ!!」
狛治と呼ばれた少年は、目を見開いたまま、操り人形のように、家までまでたどり着き、
顔に布を被せられた父親の姿と天井にぶら下がった縄を見て、力なく膝を下ろした。
「おや………じ………。」
後ろから、先ほどの住民が狛治に「親父さんからの遺言だ…」と紙を手渡され、返事もなく静かにそれを受け取っていた。
集まっていた住民は父親と二人きりにさせてあげようとその場を離れた。
少年の肩は小刻みに震え、最期の父親からの手紙を握りしめた。
「何でだよ………。」
絞り出した涙声は絶望色。
少年は天涯孤独の身となった。