第15章 蓮華
猗窩座殿は、君がいたから、感情を取り戻したんだよね。
そして、その感情が、彼を俺とは違う存在にしたんだ。
今、君はぐっすりと眠っている。
その寝顔は、安らかで、まるで何も苦しんでいないようだ。
でも、知っているよ。その眠りの奥底には、俺に抱いた怒りと、生まれてきた子供たちへの愛が渦巻いていることを。
そして、カナエちゃんを守って一緒に帰りたいって思っているんだろう?
その愛は、俺が君たちを殺そうとした瞬間、君を再び動かす。
あぁ…
愚かだねぇ…
恐らくまだ、気づいてはいるまい。
俺がただ無惨様や黒死牟殿へと君たちを生贄に差し出すだけだと思っているのだろう?
そんなもったいないことをするわけないじゃないか!
俺が君たちに仕掛けた罠に気づいたとき、君たちはどんな顔をするだろう?
それに…あの猗窩座殿が愛して抱いたこの柔肌を、猗窩座殿の目の前で歯を立てて吸ってあげたら、どんな顔をするんだろうって…!それはそれは凄く楽しみなんだ…
桜華ちゃん。
君がどれほど強い女性でも、俺の存在にどれほど怒り、憎しみを抱いても、この教会から逃れることはできないんだよ。
俺の信徒たちは、君たちを外に一歩も出させないだろう。
そして、君の最も大切なものが、俺の手の届く場所にあるという事実は、君の心を縛り続ける。
さぁ、芝居は、まだ始まったばかりだ。
桜華ちゃんの心は、俺によって、どのように変化していくのだろうか。そして、猗窩座殿の感情は、俺の目の前で、どのように破壊されていくのだろうか。
ああ、楽しみで仕方がない。
それに…
君には別のものを感じてるんだよ。
今まで出会ってきた女性とは違ってとても魅力的なものをもっている。
それが何か…
君たちを引き渡す頃には解るかな?
そう考えると、少しだけ、胸が温かくなるような気がした。
おや。お洒落な装いの鳥がいるね。
鴉じゃないみたいだけど猗窩座殿たちのものかな?
そうだよね?
きっとそうだよね?
じゃぁ…
君を使ってこのお遊びを始めようじゃないか…。