第15章 蓮華
「そのあとは生まれた子供を殺しに行こうかな?あの世で家族4人一緒だから、誰も悲しむことがないよ!!」
神経を逆撫でする。
不快でしかない。
全身の血が煮えたぎるようだ。
堪えきれずに、いら立ちが顔に出てしまってるのが解る。
息が荒くなる。
お願い。
もう、話さないで。
もう少しで殺してあげるから…。
「まぁ、もちろん、人間たちの言うあの世なんて人間が作った可哀そうな幻想なんだけどね。
それでも、一家惨殺の方が無惨様はお喜びになるはずさ…」
『一家惨殺』
その言葉で、抑えていた深い深い憎しみが憤怒となって全身を暴れまわるのが分かった。
父、母、兄妹…
使用人や雇っていた鬼狩り様も
全てが目の前で奪われていったあの日の光景が鮮明に蘇る。
気付いた時には体が動いていた。
童磨が口元に宛がっていた鉄扇を素手ではたいて奪い、
喉元に突き当てる。
「不愉快ですね…。そろそろそのお喋りな口を閉じてはいただけないでしょうか…」
「おぉ…。驚いた。なんだぁ。話せるんだね!!
それに、なんだい?
それも猗窩座殿の拳のようだった…。
そうか、そうか…。いろいろ教えてもらってたんだね!!」
意気揚々と話すのは余裕がある証拠。
体格が違いすぎるこの鬼を押さえつけておくなんて、今のわたしには無謀な事。
でも、
玩具のように命を軽んじるような口ぶりに、どうしても声を抑えることが出来なかった。
「わたしからも、彼からも、もう何も奪わせない。
そのように軽く命を奪うと宣い、数々の命を葬ってきたあなたは、今夜ここで終わりにして差し上げましょう」
あぁ。
表情を一つも変えないどころか、どこか面白がっているよう。怒りに身を任せているだけで、体に力が入っていないことなどお見通しらしい。
「教祖様」
襖を叩く音に我に返る。
聞き覚えのある声。
急な訪問者に気を取られた隙に鉄扇を取り返され、冷たい手で背を支えられた。
「ほら。信徒の者が驚いてしまうから、君は寝ていてくれないかい?」
耳元であざ笑うかのように囁かれ寝かされる。
横たえられて、緊張の糸がうまく処理できないまま放心した。
「ごめんね。取り込み中だったんだ。
今は大丈夫だから入っておいで」