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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第5章 傷と罪は共に背負うモノ




親父と呼ばれた男性は、咳が止まらぬようで、

少年によく謝る

「手間をかけてすまない」

「咳が煩くてすまない」

「満足に働けなくて申し訳ない」

「父親らしいことをしてやれず申し訳ない」


無理もない。

自分でできないことは自分でしたい。

病でなければ元気な働き盛りの歳の男が

まだ少年の域の息子の世話になることはない。

悔しくて当たり前。

情けなく思えてくるのは当たり前。



ましてや、最愛の息子が自分の手を罪で汚しながら、

自分を生かしている事実を気づかぬわけもない。

心苦しく思わぬわけがない。



その精神的な疲労まで気づかぬ程

少年は幼かったし、父親を生かすことに一生懸命だった。



それは


天涯孤独になるという恐怖

唯一の肉親の死という恐怖

父親への大きな愛


そして

自己犠牲を痛くも痒くもないと思うほどに

自分に対しての愛が皆無なようにも思えた。




少年の父親は日に日に痩せ細り、精神も衰弱し、

看病もつききりになる。


少年は寝る間を惜しんで、

遊ぶことも知らず

己の父親を助けるために、看病、そして薬を買うために人から金品を奪って逃げきれるように

鍛練に勤しむようになっていった。



そしていつしか、掏摸の罪による入れ墨が両腕に3周になり他の刑罰も与えられる。



父親もその息子の痛々しい姿と懸命な看病をこなしながらも、愚痴も弱音も吐かない息子の姿に


自らの心もどんどん傷めていった。


生きている意味を見失っていくように見えた。


その変化に少年は気づくことなくどんどん罪を重ねていく。


そして再び罪を犯してお縄になり奉行所へ連行された。



息子を愛している父親ならば、

息子が帰らぬ理由など、その心境など

察するに余りある。


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