第14章 命と古傷
産屋敷が用意した屋敷まで、目眩しの役の隠との念密な作戦で散り散りに走る。
二人の子は俺と雛鶴で背に背負い、空の箱を乗せた移動していた。
気配がして滑車を止めると、そこには案の定追っ手が姿を見せる。
声は出さない。
黒い被り物もしたまま。
衝撃を与えないように一人を雛鶴に託し
なるべく瞬殺…いや、殺しはしないが気絶させるほどの手刀を頸に入れる。
あと一人が、その先で滑車に攻撃を仕掛ける。
雛鶴に一撃を入れようとする手前で蹴とばし、横に払った。
木に激突しておそらく気絶したか動かなくなった。
「悪い」
「いえ…、お子さんたちも無事です」
「助かる。行こう」
「はい」
再び走りながら、遠ざかる屋敷に残してきた小夜子さんと悟、桜華の無事と作戦の成功を祈る。
想定外の事が起きないようにと願った。
私と愈四郎は男性の隠の方が滑車を引いていただいての移動。
この後、鬼滅隊当主が手配したという屋敷に向かい、桜華さんの子どもたちと合流する予定になっている。
宗教に猛信した人間とは恐ろしいもので、教祖に言われたことを盲目に信じ執念深く追いかけてくる。
人間とてその心次第で神にも仏にも鬼にだってなりえるし、それが集団になると社会をも動かす力になるもの。
即ち、捕まえるまで執拗に追いかけてくる。
日の光に当たらぬよう、棺に押し込められるように乗せられて今移動しているのは、桜華さんの指示。
鬼を滅する側の鬼で、万が一鬼を連れてきた場合、捉えられる可能性があるからとの判断。
産後、多量出血していた彼女は、流石、縁壱さんの血を引き継ぎ、狛治さんの血を取り入れたと言えるほどの回復力で命の危機を脱して小夜子さんたちに託せるほどだった。
危ないことがあれば、教会にはカナエさんがいらしゃる…。
あとは天命に任せて、上弦の弐を滅するまで…。
ただ心配なのは上弦の壱と無惨がその後どのような動きをするか…。
狛治さんとまた、今後のことを話し合わないといけません。
ただ、今、何もできない私たちは、誰も怪我一つせず皆が無事で再会できることを祈ること。
それしかありませんでした。