第14章 命と古傷
今まで、命というものは
俺から遠ざかるばかりの存在だった。
そういう印象しか抱けないほどの地獄の果てに
一度は鬼という存在に堕ち
更に多くの命を奪い、命というものを遠ざけてきた
あの日、無意識に
花火を求め住み着いたばかりの俺の目の前に
死を選び命を自ら捨てる道へ進もうとしていた
君を見つけてから
俺は奪われたり失くしたりして苦しいという思いを
していない。
期間として、そんなに長くもないのに
『何も奪われていない』
というのもおかしい話に聞こえるだろう。
それでも、そう言ってしまうのは
君が俺に与えたり、切り開いてくれた道が
地獄の沙汰を受けるべき俺にとって眩しすぎるほどに
暖かい陽を放っていたからだ。
だから、奪った命の償いをしながらも
君が果たしたいことを共に果たして
老いて死を迎えるまで一緒に生きたい。
それは、互いに助け合いながらであり
互いに築き上げるものが幸せであると
一緒に生きてきて俺自身が学んだから。
今度こそは何も奪わせない。
そして、叶うなら
人から奪った命の数だけ
沢山の誰かの幸せを守れる人間になりたい。
そう、思うんだ。