第11章 新しい芽
「貴方の周りにいらっしゃる方は誰一人放って置いてくれないんです。
だから、あまり心配させないようにしましょう。
わたしも、狛治も同じように気を付けないといけないところです…」
「ちっ」
「桜華さん…」
種類は違えども、実弥が纏う雰囲気や傷は稀血の類いと悟っての言葉だった。
カナエは、向かい側で目を丸くして桜華を見た後、同じように実弥に心配しているようなまなざしを向けた。
「俺はいいんだよ…俺は」
「話聞いてたか?まぁ、難しい顔せずに今日だけはゆっくり楽しもう!」
「てめぇ、おはぎばっかりよこしてんじゃねぇ!!」
「だって好きなんだろう?」
どんなに冷たくあしらわれようが、匡近は実弥のことを構っている様子がほほえましいものだ。
それだけ気にかけてくれる人がいるのなら、いづれは心を開いて自分を大切にしなければならないと心から思ってくれる日が来るだろう。
そう信じることにした。
対して不死川の方も不思議と反抗する気もなく、されるがまま言われるがままで、桜華に対して反論したり拒絶する気は生まれず不思議な暖かい感覚を感じていた。
「桜華、そろそろ腹の方、きつくなってきたんじゃないか?」
「はい…。ちょっと。」
臨月よりも大きく見える腹で長時間体を起こしているのも座っているのもどんなに屈強に鍛えていた体であってもきついものだ。
それを気にかけていた狛治が声をかけると、カナエがしのぶを引き連れて桜華を支えに彼女の背に回る。
「わたしのためにお集まりいただいたのに申し訳ございません」
「いいや、顔見せに連れてきたのが目的だから大丈夫だ。ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます」
宇髄の言葉に少し笑みを返した後、カナエとしのぶに支えられて、桜華は席を外す。
部屋を出るまでその姿を目で追いながら心配そうな視線で見送った狛治は、#NAME1#の姿が見えなくなると、実弥の方へと目をやった。
「ここまで付き合わせて悪かったな。気が向かなかっただろうに」
「いや…」
「実弥がここまで来たことを後悔させないために、俺がしてやれることはあるか?」