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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】※加筆修正中

第11章 新しい芽



春の盛りに、肌を優しく射す日差しの下、心地よい風が桜華の髪を後ろへと流した。

手元には読み終えた亡き父が前世書き残した手記の1ページが揺れている。

熟読を重ねながら思い出した断片はほぼ繋がりながらも、桜華の心はまだどこか他人ごとにも思える部分があった。

それは、今自分がここで生きているからであると言い聞かせ、今、生きているこの瞬間を大事にしていこうと心に決めていた。

「桜華、ここに居たのか。」
「狛治...。」

道着に手ぬぐいを首にかける姿が板について、表情も以前に比べればよく笑うようになった狛治は今の時期のお日様の光が良く似合う。

「また、お義父さんの本を読んでいたのか。」
「はい。今後、何かしらの役に立てるのではないかと思って。」
「そうか。」

狛治も父の残した手記を読んでいた。杏寿郎の前世と思わしき煉獄家とのつながりが、前世のわたしにあると知っても、彼は少し気にはしたけれど「今を生きている君の中で一番の男であればいい」と言ってくれた。

それからも、感情論は持ち込まず、わたしの身体に起きうること、皆のためになれるような知識が得られればと思って二人で読むこともあった。

「あんまり魂を詰めるなよ。今は腹の中の子が優先だ。」
「はい。」

8か月を迎えて、二人もいるであろうわたしの腹部は通常の臨月よりも大きく膨らんで、歩きづらさが出てきた。

ときよりこうして、子どもの話になれば少し声を震わせて涙ぐむほどに、子どもを楽しみにしてくれる狛治は、心配性と世話焼きな元々の性格が度を増していた。使用人がいるにもかかわらず、家に居れば身の回りの事は全てやろうとしてしまうし、最近、歩きにくくなったとぼやいてからは、家に帰って来るなりわたしの姿を探してはずっとそばにいる有様だ。

彼の近況としては、屋敷と共に修練所も出来上がり、天元さんと岩柱の悲鳴嶼行冥さんが選ばれた柱候補を訓練隊士として稽古が始まった。

それからは慌ただしい日々を送る彼だけれど、毎日充実した表情で帰ってくるのを見ていれば、本当に今は楽しいのだろうとこちらも笑顔になってしまうほどだった。



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