• テキストサイズ

鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第10章 天照手記ー魂の記憶ー



あぁ。そうだ...。
桜華も教えてくれた。杏寿郎も示してくれた。
私は生まれて、存在しうることを無条件に喜ばれる存在であったことを。そして宗寿郎がそれらを言葉で示してくれた。

彼女に与えられたものがどれほどのものだったのか、再度強く思い知らされる。この一家と暮らして共に歩んでいく間どれほどに幸せで満ち溢れていたか。

その暖かさに触れて、ふと目頭が熱くなり、大きな暖かいものに包まれる感覚に打ち震える。

もう、思い残すことはない。

「私亡き後に拾うてくれるのならば、日がしっかりと昇ってから来なさい。桜華が築いてきたものを簡単に壊してはならぬ。」
「心得ております。叔父上様たちがお迎えに上がるでしょう。」
「皆の者には世話になった。最後までかたじけない。」
「皆、大祖父上様が大好きにございます!家族ではございませんか!!」

”家族”その言葉の強さに胸を熱く貫かれたような気がした。

あの時........妻も子どもも失い、兄は心を病んで鬼になりすべてを失った絶望の淵にいたこと。
あれから数十年。桜華という兄の忘れ形見の娘に出会い家族となって、今は沢山の子どもたちがいる。

それは一重に彼女がくれたものなのだ。

暫く黙り込んでしまった私を覗き込む。
ふと、あの時の彼女を思い出し、目の前の青年と重ねた。

「宗寿郎。私の最期の其方への我儘を聞いては貰えぬか?」

宗寿郎はきょとんと首を傾げた。答えは「なんなりと。」
とのことだった。

外に出て、視界に入るのは眩しいくらいの輝かしい青空。
訳が分からぬ顔をしている宗寿郎を天に掲げた。

「おわっ!!大祖父上様?!!」
「昔、桜華が子どもの頃、同じことをした。其方が一番あの子に似ておる。」
「......。」

それを聞いては、焦ったよう羞恥に火照った顔も、ふわりと柔らかくなり、暫くはそのままされるがままでいてくれた。

いろいろあった。身が引き裂けるような想いや、この命を捨てようと思うほどの事も幾度もあった。
だが、桜華に出会い、その後の人生は心の底から満たされた、波乱万丈の楽しい人生であった。

彼女が築いてくれた”日神楽家”のお陰で。

/ 430ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp