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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第10章 天照手記ー魂の記憶ー



珠世は、江戸の片隅の長閑な村にいた。
鬼であることを隠し、”日に当たれぬ病だ”と申したうえで、そこに住まう医者の元へと、夜な夜な勉学に励んでいるようだった。
約束をしていた待ち合わせの場所に現れた彼女は、あの日から容姿は特に変わりない。

私の顔を覚えていてくれたようだったが

「お侍様......。お久しぶりでございます。あ、あの.....ご用件とは...。」

気が変わって己を斬りにでも来たかと思ったのか、こちらを警戒しているようだった。

「斬りはしない。安心してくだされ。」
「では、何故?」
「姪と共に新しい商家を創設する。表向きは商家だが、産屋敷家とは別の鬼狩りの新しい軸になる。
珠世殿。率直に申すが、娘に協力してはくれないだろうか。」
「私が...でございますか。」
「無惨を倒すよう頼んだが、人とは相いれない鬼である其方を一人で野放しにして来た。
今まで苦労も多かったであろう。もう20年近くたってしまったが、本当にすまない事だと思っている。」

そう、頭を下げると、滅相もないと慌てて頭を上げさせた。

「あなたが、あの時私と無惨を話してくださったからこそ、今があるのです。
その、”協力”というものは...。」

「娘が立てる商家を陰で守ってやって欲しい。そして、鬼狩りとして身を隠す事の術を身につけてやって欲しいと思っている。
鬼、または鬼舞辻のことを良く知る其方にしか頼めない事だ。」
「そういうことでしたら、何かお手伝いできるかもしれません。」
「助かる。明後日、姪夫婦と会ってはくれぬだろうか。」

珠世は、しばらく、私の方を見て考えた。
そして、

「姪様、娘様......。もしかして...。」

珠世は、知っていたようだ。
私の兄の事を。

「兄の.....、鬼になってしまった、我が兄が置いて行った娘だ。」

珠世は、袖で流れた涙を拭きながら、私に何度も”申し訳ない”と言っていた。
頭がいい彼女だ。
きっと、その言葉で、私たちの関係も、娘の生い立ちも解ったのだろう。

彼女がしたことでもないのに、珠世は心の底から、罪悪感に縛られているようだった。

「そう、憐れむ必要はない。娘は立派に育っておる。
でなければ、鬼狩りの家を築くことなどせぬ。

ただ、珠世殿に娘を会わせたかったのは、珠世殿のためにも娘の為にもなると思っての事だ。」
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