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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第10章 天照手記ー魂の記憶ー



「久しいね。息災で何よりだ。縁壱。」
「御館様...。」
「事前に言ってしまえば、会ってはくれないと思ってね。
驚かせてしまってすまなかったね。

そして、”あの時”はすまなかったと思っているよ。
こうして今、縁壱に直接詫びる日が来たことを、私は嬉しく思っているんだ。」

最後に謁見させていただいた時、
追放を言い渡されたあと、改めて今までの礼と詫びで頭を下げようと一度面を上げた私の顔をご覧になり、兄を思い出した幼き日の御館様は怯えに怯え、慌てて屋敷を出た経緯がある。

あんなにも幼い子どもに申しわけない気持ちが、死んで詫びたいと思った想いに鎹鴉から、”どうか命を大切にして欲しい”との伝言をいただいて、今に至るのだ。

「兄のしたこと、御館様に多大な癒えぬ傷を負わせてしまい、今でも心苦しく思うておりまする。

謝るなど、恐れ多き事。」

「巌勝が父にしたことは家族として許すことはできない。その気持ちに変わりはないのだよ。
しかし同時に、私の父、そして産屋敷家、子どもたちが、あの心根の優しい子を鬼にしてしまうほどに追い込んでしまったことも申し訳なく思っている。

痣の事も、兄の事も、縁壱が鬼狩りになるまでも、縁壱は沢山の悲しみと痛みをその心に背負い込んでしまった。
背負させてしまった。

そして、縁壱は巌勝の弟であっても、全くの別人なのだよ。
となりにいる桜華さんも然りだ。」

御館様が桜華の方に目を向けた。
桜華は兄が鬼になった時に近い年頃になってきた。よく似ていると言ってると言ったことがあったからか、気遣いで顔を上げれないでいた。

「桜華さんと呼ばせていただくよ。いいかな。
私は、現鬼狩りの当主、産屋敷耀哉という者だ。
あなたの話は、この鴉からいろいろと聞いたよ。

新しく鬼狩りの家を縁壱と隣にいる杏寿郎と築こうとしているんだね?」

御館様はゆっくりと席をお立ちになり、横に並ぶ二人の前に歩み出た。

「顔を見せて欲しい。桜華さんは、御父上によく似ている。」

「恐れながら、ご当主様の御心のお傷故に、顔を上げることが出来ませぬ。
父が、巌勝が、取り返しのつかぬ過ちを犯してしまいました。」

「もう、心の整理はついているし、私は前を向いている。
桜華さんとは対等であって欲しいと思っているんだ。」
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