第10章 天照手記ー魂の記憶ー
その後二人で話し込んだ後、桜華を交えてこれからの話をした。
まずは、杏寿郎の事で煉獄家に赴き、婿入りの許しを得て、三河に赴く。
事情が事情故に、婚礼も商いも急がねばならぬと話はまとまった。
後日煉獄家に桜華と二人で向かう。
全開よりも緊張していたが、流石は武家の当主の娘である。否、覚悟はそれ以上に強いものであろう。
並の領主よりも凛々しく映った。
家に入って早々、誠寿郎は私たちに怒鳴り散らし、桃寿郎は無言で強くこちらを睨んでいた。
桜華も私も、怯むつもりはなく、婿入りを申し出てくれた杏寿郎も同じく二人と従兄たちを説得した。
当然であるが、鬼狩りの頭に謀反を働いた兄の子を忌々しく思う気持ちも解るが、熱が上がってらしくない言葉も次々にあがるのにはこちらも失望としか言いようがなかった。
それでも桜華はすこぶる平常心を装って冷静にひとつひとつ説明しては頭を下げる。
「煉獄誠寿郎様、桃寿郎様。お気持ちはよく分かります。
古き世から今までかなりの年月続いてきた煉獄家です。
その煉獄家が、代々使えてきた産屋敷家に反旗を翻しお命を奪い首を持ち去った父を許さぬのは至極当然の事。
娘である私が何度わびたとて、その御心とお家の名が、歴史が許してくれるなどとは初めてお見受けした時より寸分たりとも思うてはおりません。
この縁談は煉獄家と継国家、そして未来に鬼の首魁を亡ぼすことに繋ぐための要になると、杏寿郎様と縁壱と話しております。」
「怪しからん!!なぜ、柱を目前に控えている杏寿郎がここで鬼狩りを辞めてまで嫁ぐ必要がある?!
御館様にどう釈明せねばならん?
御館様に背を向けよと申すか?!
あの頃、力になると申したのはそういうことではないぞ!
杏寿郎を誑かしおって!」
血管が弾けるのではないかというくらいの剣幕ぶりにも、両手をつき頭を下げたまま微動だにせず耐える。
「お待ちください伯父上。寧ろたぶらかしたのは...」
「お前は黙っておれ!心底失望した。煉獄家の名をここで汚すのか。鬼狩りの名を汚すのか!!」