第4章 矛盾
「無惨様は、お前と会うことをお望みだ…。
恐らくであるが
まだ、”生き残り”がいるとも思ってはいない…。
ゆえに、私の汚点となりえる…。
しかし殺すことも叶わぬ…。。
無惨様の御前に姿を出すな。
猗窩座がお前を殺すこととなり、お前の血を大量に浴びた猗窩座も中毒症状になり後遺症で苦しむだろう。
あの男の強さの邪魔はするな。
私の邪魔もするな。」
鬼は人の血肉を喰らい生きるというのに
目の前の鬼は、稀血であるわたしの血が危険だという。
鬼が特別に好むとされる稀血であるこの血が、浴びると中毒になるというのはどういうことか。
しかも、桜華には微かな記憶だが、猗窩座は前にの血を嘗めており、その後何の変化も感じなかったはずである。
《どういうことにございますか
わたしの血は特別なのですか》
黒死牟は知らないのかという驚いた表情で桜華を見下ろした。
「………全くもって心当たりのないようだ。
血のことは何も聞かされていないようだな。」
《血に関しては何も聞いておりません。
お教えください。》
これから大きく関わることだととっさに判断し、食いぎみに身を乗り出した。
猗窩座が女をなかなか連れてこない上に、無惨様は猗窩座との謁見の度に機嫌が悪くなられる。
そして、このところ猗窩座に見ていた闘争心と修羅の気迫が薄れるのを僅かながらに察し、来る度に女の匂いが色濃くなるのを感じていた。
そして、人間の頃、妻帯者であった私が、愛を以てそれなりの生活を送ったゆえの勘だが、心を惹かれているように思った。
演じることでのみのご経験のない無惨様だからこそ気付かないようだが、それも時間の問題である。
そう思っていくつか確認すべく猗窩座が来た道を気付かれぬよう逆走しここへ来た。
出てきた女は、5年前、この女を守るために部屋に閉じ込め隠して、そこへの道を必死に塞ぎ守り通していた女によく似ている。
『わたしは日神楽綾乃!ここは決して通させませぬ!命にかえても!』
どんなに切り裂いても、力尽きるまでその体を呈して通路を塞いでいた。
母親だったのであろう。通路の奥、塞がれた戸の奥で気を失っていた女児は女と瓜二つだった。