第10章 天照手記ー魂の記憶ー
次の日。日が高く昇る頃。
客間に桜華を呼び話をすることに。
まだ、今の御館様が先代の御館様より位を譲り受けられたばかりの歳と同じ齢だ。
特殊能力の影響で大人びた口調と心で話す彼女に、私が兄へと向けるものと同じ想いを抱いているように思い、運命的な言い表しようもないものを感じた。
だからこそ、私の全て、鬼の事、鬼殺隊の事を余すことなく話そうと思った。
きっと、桜華はそれらの事から、考えをめぐらすだろう。彼女の考えが聞きたい。
そう思っての事だ。
「叔父上様。お呼びでしょうか?」
「私の長い話に付き合って欲しい。桜華ならば、その齢でも、ある程度は私の想いや、生きてきた経緯、鬼狩りの事を理解してくれると思うておる。」
「はい。叔父上様のお話とあらば喜んで。」
少し緊張した面持ちで頭を下げる彼女に目を細める。
出会って既にひと月以上にはなるが、ここに来るまでに、日誌を残そうと思いいたったのも、この娘と長い付き合いになる予感がするのも、運命的なものに思えてならなかった。
その奇妙な直感に身を任せるように様々な事を聞かせた。
私がこの世に生を受けて
兄や家族と出会い
母と兄に良くしていただいたこと
母の死とともに兄のために生家を出たこと。
うたに出会い
恋をして
夫婦となり
子が生まれる目前に
二人を鬼の襲来で失い
鬼狩りと出会い
自身も鬼狩りとなったこと。
鬼狩りとなり、
呼吸術を教え
痣者を生み出した矢先
兄と再会し
兄が鬼狩りとなったこと。
その矢先、
痣を出現させた者が死にはじめ
非難を受けたが
兄に助けられたこと。
鬼の始祖と連れの鬼に出会い
仕留めそこね
連れの鬼に情報を貰い
直後に私を探していた同志に
兄が鬼になり御館様の頸を撥ね
消えたこと。
鬼狩りを追われ
鬼に襲撃を受けていた竈門家との出会い
放浪の旅
そして、連れの鬼”珠世”から聞かされた鬼の始祖とその配下の話しなどを事細やかに話して聞かせた。
話し終えたのは空が闇を迎えて月が美しく輝くころ。
それでも、幼い桜華は姿勢を崩すことなく、表情をころころと変えながらも、真剣に聞いていた。