第9章 月詠の子守唄
心做しか、狛治も目が充血してる。
その表情からしても、喜んでくれてるのが解る。
お腹に当てられた手に自分の手を重ねた。
こんなに愛されて、これから先の事なんか置いといて喜んでくれて、迷う余地なんてどこにあるというのだろう。
「わかりました。父の...いえ、前世からのわたしの本懐は絶対この手で叶えます。
おそらく、生きてこの本懐を果たせという父の願いがこういう形になったんだと思います。
だから、狛治も一緒に、生きて一緒に戦って、その先の世界を見ると約束して欲しいです。」
「当然だ。俺は死なない。約束する。」
意志の強い眼差しで体の芯まで安息と熱で溶かされていく。
抱きしめたくて、逞しい首筋に手を伸ばした。
そっと微笑んでわたしの体を引き寄せた。
「狛治......」
「ん?」
「ありがとう。」
「俺こそだ...。」
一度抱きしめあって、離れた後どちらともなく口づけた。
目の前の愛を求めあって、確かめ合って、愛に溺れて
身を焦がすような甘ったるい感情が今が一番の幸せだと思わせてくる。
窓からは優しい夕焼けが差し込んで、また鬼が支配する夜を迎えようとしている。
その時までの一瞬の安息が永遠の長い時間に思えた。