第9章 月詠の子守唄
横になっていたのをゆっくりと仰向けに倒されて、もう一度心が焼けてしまいそうな程に優しく口付けられた。
何度か愛をひとつひとつ落としていくような優しキスの後、また深い愛を思い知らされるような強い眼差しで見つめられた。
何か大切なものを伝えるかのように。
「桜華....。まだ、ハッキリと断定は出来ないが、もうひとつお義父さんが俺たちに贈り物を授けてくれたのかもしれない。」
「........どういう、事?.....」
「天元が、君の身体の中に二つの小さい心音を聞いたらしい。胡蝶も少し君に違和感を感じていたようだし、昨日も一瞬だけだったが俺も行為中に何か違うのを感じた。
意味.....解るか?」
優しく諭すようにゆっくりというそれは、思っても見ない事で信じられる気がしない。
でも、
目の前の狛治は、それを聞いて喜んでくれている。
もう、そうなったからにはどうする事も出来はしない。選択肢はひとつしかないのだけど、他の事はどうしたらいいんだろう。
いろんな考え事が整理する暇もなく溢れかえる。
言葉がでなくて、黙り込んでいると
「その様子だと見当はついているな?」
「”子ができた”ということで間違いないのですね?」
「あぁ。それに、君の家系でだろう。二人だ。
俺は喜んで一緒に育てていきたいと思っている。
そして、さっき珠世さんにも明子さん、悟さんにも言った。みんなで育てようということだ。」
「.....あ.........」
珠世さんが先にあの話をしたのなら、わたしが何の心配もいらないように動いてくれたんだと思うと、じわじわと暖かいものが込み上げてくる。
でも、わたしは、まだ戦わないといけないのに、
もし、わたしが死んだら...そんなことになったら......
「ゆっくり考えていこう。動揺するのは今の状態では当然なのは解ってる。
戦ってもいい。戦わなくてもいい。今決めなくてもいい。
俺もみんなも桜華の意思を尊重する。
ただ......、今は体を大事にしてくれ。
俺が君と人間として生きている証がここにいると思うとそれすら愛おしく思うんだ。」
滔々と流れて止まらない涙を拭う指が堪らなく暖かい。
言葉の端々にいたるまでに込められたわたしに向けられた想いが、その裏から見て取れる行動が胸にしみて涙が止まらない。