第9章 月詠の子守唄
音?
二つ?
イマイチぴんと来ない。
コイツが言いたいことが解らないと思った狛治は、どこかで胸が騒ぐ感じがした。
一緒に歩いていたカナエが、当人よりも早く、宇髄が言わんとすることを察して、驚き、口を両手で覆った。
「なんだよ。気持ち悪いな。言いたい事があるならさっさと言え。」
むず痒い気持ちが悪態をつくように二人に答えを急かした。
「宇髄さん。言われてみれば、少し、わたしにも思い当たるところがありました。」
「胡蝶もか。」
「はい。何となくですが...。」
「だからなんだ!!?」
二人が顔を合わせて、何かわかったようにしているのが居心地悪く、狛治は二人に詰め寄った。
「お前はどうなんだ?」
それを気にも留めず再び聞き返す宇髄の表情が真剣であることに面食らい、一歩後ずさる。
「確かに...、何かがいつもと違う気がしたが...。」
渋々そのように答えると、宇髄から感じていた緊張感が少し和らいで、眉尻を少し下げた感じがした。
「3人も違和感持つなんざ、派手に確実だろうな。」
「だっ......!!だから何なんだ?!」
「狛治、お前、まだ気づかねぇのか?地味に鈍いな。」
「はぁ?ハッキリ言いやがれ。」
呆れたように宇髄が言うのが気に喰わないらしく、しかめ面で言葉を荒げた。
狛治は、体幹的に、言わんとすることが解った気がして、でも、それがあり得ないとどこかで思ってるからこそ、それが言葉にならない半透明なものに映った。
「ハァ......。いいか?俺は耳も勘も派手にいい。医療に関わっていろんなやつを見て血の匂いをしってる胡蝶もそういう小さい変化は敏感だ。
俺が聞いたっていう音は心音だ。それが小さいのが二つ聞こえる。ほんの微かにな。」
「......?!!鬼になったとかそんな類か?」
カナエも宇髄も拍子抜けして頭を抱えたのは言うまでもない。
「.....お前地味に阿保だな。無惨じゃあるめぇし、そんなことになるか!!」
いよいよわかってきた狛治は目が泳いで挙動不審になった。
「え.....?え.....」
シビレを切らした宇髄が耳打ちをするように顔を近づけた。
「____________。」
「.........は?」
狛治は目を大きく見開いて、体全身が言い表しようもない暖かい感情でびりびりと痺れるのを感じた。