第9章 月詠の子守唄
「聴く覚悟、教えていただく心構えはできております。
ただ、生き様と死に様を
心に焼き付けたいだけです。
わたしの精神的なご心配なら無用にございます。」
珠世さん、あなたも泣いていらっしゃるのでしょう?
身体が震えていらっしゃるのはわかるのです。
「あなたは今も変わらないのですね.......。
あなたは今も昔も.....彼以上に人のものを背負って、ご自分のものも背負われて........。」
「大きなものを沢山背負われてるのは珠世さんも同じことでしょう?ご自分の過去も罪も、わたしたち一族のことも......鬼舞辻のことも......」
わたしたちは気づいた時は互いを慰め合うように抱きしめていた。
「教えてください。わたしにも珠世さんにも共に背負ってくださる人がおります。
それに、父が孤独になってしまうでしょ?」
その時か、それを知らされた時を思ってか、珠世さんは涙が止まらない様子で、何度も袖で小さく拭ってはひくひくと肩を揺らしていた。
「あなたがた2人とも、私を一人で苦しませては下さらないのですね.......。
私は鬼ですよ......。」
「えぇ。でも家族です。一緒に歩んできてくださったではないですか。」
綺麗なお顔に美しい瞳が涙をいっぱい溜めたままこちらを向いた。
「桜華さん.....。本当に.......。」
ありがとうという言葉は心で聞いて、
「父もわたしも居らぬ間、本当にありがとうございます。もう、悲しいことも苦しいことも半分にしていきましょう?
わたしの哀しむべき分も分けてください。
家族として。」
珠世さんは暫く涙で揺れる目でわたしを見たあと、意を決したかのように深く息をして、目を伏せた。
「わかりました。お話しましょう。」
悲しい瞳は少しだけ強さが増したように映った。