第9章 月詠の子守唄
翌日。
カナエと宇髄にそれぞれの鎹鴉が、伝令を伝えにやってきた。
それぞれの次なる任務が明らかになる。
移動も含めて早く発つことになった二人に合わせて早めの朝食になった。
明子と悟が用意した朝食は、鬼狩りの家の使用人としてふさわしいと言わしめるほどの色とりどりな栄養価が高いもの。
4人はそれを有難くいただいて、2人は出発の支度を整え応接室に来た。
「これを御館様に...?」
「はい。わたしたちの意志と、昨日話した修練所の件、薬と治療の研究の件について決まったことを詳細に書きました。」
宇髄の前へ差し出した箱に収められた手紙には、日神楽家の月と太陽を模した家紋が入っている。
それは、少し前に狛治が杏寿郎に渡した鬼の資料にもあったもの。
代々使われていた家紋の判子は産屋敷家と交わされる手紙に捺されているものだ。
「わかった。責任もって届けるぜ。」
「よろしくお願いします。」
今後は、定期的に珠世とカナエによる、日神楽夫妻の血等を含む研究が始まり、修練所と日神楽邸の創設に動き出す。
ただ、まだ屋敷を構えていない日神楽家一行は研究も兼ねて暫く珠世たちと過ごすことになっている。
その他諸々を詳細がこの手紙には書かれている。
「こっちも隊士の育成に関しては急務だ。お二人さんが早々に動いてくれるんなら、御館様もさぞ派手に喜ぶだろう。」
「無惨を殺すための薬や人間化の薬、治療などの研究も格段に進むと思います。
私の屋敷にもそれを担える者がいますので、報告することが楽しみです。」
宇髄とカナエは手紙を確認したうえでそう述べた。
「わたしたちは暫くこちらにおります。また鍛錬やわたし共の研究の時お会いしましょう。
生きてまた会えることを切に願います。」
日神楽家がまだ動けない以上、命の危険と常に隣り合わせである現役の鬼殺隊員である二人に対して、武運を祈り頭を垂れた。
「姫さん達も命を狙われている身だ。珠世さんもな。ま、お二人さんがいたら大丈夫だろ。特に、姫さんがいる範囲なら、狛冶、お前が真っ先に命を張れよ。」
「…?言われるまでもない。」
宇髄の言い方が少し引っ掛かったものの、そんなことは一緒に逃げてくるときから決めたことだと返事をした。