第9章 月詠の子守唄
わたしより高い体温に包まれて、愛された余韻に浸る。
「あぁ。桜華がいてくれたら何でもできるな...。」
狛治はわたしのおかげで幸せになったっていうけど、
何でも出来るって言ってくれるけど、それはあなただけじゃない。
「わたしだって同じです。狛治がいてくださるからなんでもできるって思っています。」
「そうか.....。」
嬉しそうにしている姿を見て、一緒に嬉しくなって、
じゃれ合うような甘い時間は幸福以外の何物でもない。
「ありがとう」
あなたじゃなきゃ、わたしだけでここに来ることはできなかった。
見つめて、優しい眼差しに見つめ返されて
照れ隠しに口づけられて...。
分厚く固い手が頭を撫でてくれる優しい手つきから
絶対的な安心感を与えられて甘やかされる。
わたしが笑っていられるのは狛治がいてくれるからだって改めて思った。
与えられる温度はいつしか、桜華にとってここ最近の精神的な疲労にひと時の休みをもたらすかのように
暖色の微睡みに堕していく。
それを見送るように眺めていた狛治もまた穏やかな安息に包まれながら寄り添うように眠りについた。