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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第4章 矛盾




無惨様に、俺が見えてない、聞こえてない、感じられていない。


それは桜華自身が原因なのだろうけど聞けない。


黒死牟が言ってたことも気になる。



だけど、全てを知ってしまって最悪な状況になればこの手で桜華を殺さねばならなくなる。


今までも女の苦しむ姿を見ると胸が苦しくて、

その度に網膜と記憶の奥で何かの映像が一瞬だけ弾けるように見えていた。


だから女を見かけたり気配を感じたら距離を置くようにその場を離れるようになった。
殺さなければならない鬼狩りでさえ、女であればそのようにしてしまうし止めを刺せない。




桜華を見つけたときは、死を望んでいることは明白な状態だった。


だから放って置けずに連れてきた。


その屍のような空っぽな女を抱いている感覚は
人間の時に感じたことがある気がしてならない。




すごく苦しい。


『弱者である存在と馴れ合いたくない
だけど拾ったからには殺せない』

中途半端だが大きな矛盾に抗い続け

気がついたら1ヶ月最低限中の最低限しか口を利かずに過ごした。



それでも、少しずつ食事もするようになり、体も起こしている時間が多くなって、僅かに表情が出てくるようになった。



そして、今日、生きるために必死で戦っていた痕跡を見て確実に心が生きたいと言う方向に向かっているのを強く感じられたのが嬉しかった。



共にいるうちに本来の桜華は底抜けに優しく全てを見透かしてしまうほど澄んだ女だと解ってきた。
何を知っても受け入れて、目の前にいる者の今の心を見ているようにも思う。


それが心地よいから今まで手放せず、

だが、俺が鬼であり、桜華が人間である以上近づきすぎることなく見守ってきた。


『力の強さ、戦いに勝つ強さのみが生きることを許され
弱者が淘汰されるのは自然の摂理に他ならない』


という信念を土壇場ギリギリで無様になろうとも守り抜きたかった。



でも、数々の矛盾が俺の目に現れ、否応なしに問い続けられる。




桜華は弱いにも関わらず俺に出会い生きながらえ、戦う以外で俺の奥の方を静かに激しく揺さぶり動かしていく。


淘汰されるのは自分では何もできない弱き者では決してないと目の前で見せつけられているのだ。



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