第9章 月詠の子守唄
「おい!取り込み中わりぃが、子どもが見つかった。
隊員以外は全員無事だ!」
宇髄の大きな声に二人は振り返った。
そこには、桜華が先ほど助けた少女も立っていた。
「桜華さん。先ほどはありがとうございました。
数人死者が出ましたが、被害が最小限で済んだのは、あなた方のお陰です。
申しおくれました。
わたしは、胡蝶 カナエと申します。
鬼殺隊 階級 甲。鬼殺隊を専門に医術を提供する医者です。」
今まで幾度も隊員を目の前で殺されたのだろうか。
それを思えば胸が苦しくなる程に
カナエと名乗った少女は、先ほどの惨事を噛み締めてはいても、隊を率いたリーダーとして毅然とした態度だった。
「到着が送れてしまって申し訳ないです。カナエさんは、お怪我はございませんか?」
「はい。お陰様で……。あの……、」
「胡蝶。代わりに言う。」
宇髄が胡蝶カナエの言葉を遮って、狛治と桜華の前に立ちはだかった。
「お前ら二人は何者だ?
強ぇのも解った。
御館様に見せられた書物に書かれていた紋様が男の方の背中に描いてある。
なのに、子鬼の話じゃ、お前は"上弦の参"。なのに感じるものは、完璧な人間で俺たちの呼吸より遥かに強力だ。
納得がいくまでお前らを帰さねぇぞ。」
「俺のことはともかく、日神楽家のことは炎柱から何も聞いていないのか?産屋敷からも……。」
狛治が怪訝な顔をして聞き返すが、聞き方が不味かったのか表情は厳しいものになる。
「御館様を呼び捨てにするな。元鬼の分際で。
何も聞いていなけりゃ、"今の"炎柱はただの飲んだくれだ。
御館様からは、お前ら二人を名を伏せて"友人"と呼んだ。子どもたちではなくな。
そして、俺と胡蝶は、お前らに同行して"あるところ"に行ってほしいと言われている。
そこで全てが解るってな。」
「音柱様。耀哉様からはそのような話を聞いていませんが、そういうことでしたら、藤の宿にてお話しさせてください。
そこで全てお話ししましょう。」
表情は変えないまま淡々と話す桜華。
狛治は、先ほどの桜華が動揺している様子から、今、重い過去を話して大丈夫かと心配でならなかった。