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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃/猗窩座・狛治】

第9章 月詠の子守唄




颪は思い出す。


妻も子も蔑み、忌み嫌い、殺そうとした


己の家族を窮地に追いやった世間が許せなかったと。



「ちちうえ」



醜童…、いや、颪の前には無邪気に笑った"息子"がいた。



(なぜ、



そんなに、笑顔なのだ……)



颪はもうない手を差し出そうとする。



そこにはもうない透き通った腕が、本人たちだけにハッキリと見えていた。



幸せそうな顔をして微笑む我が子の姿に



おどけた声に息を飲んだ。




(はっ………、拙者は……)




颪は気づいたのだ。



世間はたしかに残酷だった。



しかし、



最愛だった妻を苦しめたのも、


息子にひもじい思いをさせたのも、


全て


己の優柔不断さが招いたことであるということに。


そして、鬼になり、

体の小さい我が子に沢山の"人間の子"を食わせてきた。

時に自らの意思で幼子を襲ったりもした。

しかし、その根幹は、"遊ぶ相手欲しさ"だった。

それを100年以上、我が子にさせたのだ。



重ねる必要のない罪だった。



「すまぬ……。本当に、辛い思いを……重たいものを背負わせた……。」




「颪。


あなたは、鬼になってでも子を思う気持ちは忘れませんでした。」



柔らかく静かな声で話しかけられ、颪は視線を上に向けた。



己に止めを差した女。"桜華"がそこにいる。



「わたしはあなたのその思いを、心を信じます。


あなたは鬼にされ、罪を重ねてきた。


それだけです。」



その声色に心が焼けるほどの優しく暖かい痛みが広がった。



「信じる………か……。


間違ってたか………。」




颪は静かに呟いた。
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