第4章 矛盾
走りついて目に飛び込んできたのは
開け放たれた引戸と、地面や戸を真っ赤に染める鮮血。
一瞬ヒヤリとするが、冷静に匂い感じれば鬼のものだと解り、まだ部屋の中で話し声と大きな音が聞こえた。
その瞬間頭の中で何かがプツンと切れ、家の中へと急ぐ。
そこにいたのは口元以外からは血は出ていないものの、座り込んで壁にもたれた桜華の姿とそれに迫る男の鬼。
次の瞬間には外に連れ出してぼこぼこにしてやって動かないようにさせた後だった。
部屋に戻ると虚ろな目で
だけど少しだけ安堵したような表情で俺を見る桜華の姿。
微かに微笑んでいるようにも見えた。
その表情に俺の張り積めてた何かが崩れ去り、桜華を強く抱き締めた。
「生きてて………間に合ってよかった……」
「遅くなって悪かった。」
自分の口から無意識に出てしまった言葉に驚く。
でも、それを被せて訂正する気にはなれず、離れるどころか妙に安心しきって抱く力を強めた。
桜華は最初こそ僅かに硬直していたが緊張が解けたようで少し震えだした。
「怪我は。大丈夫か?」
桜華が頷くのが解り冷静になれて初めて部屋を見渡した。
あらゆるところに衝突跡、血飛沫、それと共に壁に刺さったり落ちたりしている刃物たち。
「お前、闘ったのか?」
再び頷いたのが解った。
「そうか……。」
いつもならあのような雑魚に殺られる人間を侮辱するのにそんな気も起こらない。
それは桜華の状態を知ってたからか、
俺の中でなにか変わろうとしているのかはよく解らなかった。
俺は何をしているんだろう
最近自分が自分じゃないようだ。