• テキストサイズ

鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃/猗窩座・狛治】

第9章 月詠の子守唄




高貴さを感じる艶やかな菖蒲色の羽織に白銀の菖蒲の花。

漆黒の髪は後ろに束ねられ、漆黒に銀の先端の日輪の刀扇を持つ。

日神楽桜華である。


少女は、自身の鬼殺隊当主のような高貴さを桜華に対して感じた。

聞いたことのない呼吸であるものの

先程の一撃を見て

今まで会ったどの隊士より強いと確信した。


「ごめんなさい。わたしたちの到着が遅かったばかりに、あなたに辛い思いをさせました。

行方不明の子供と、あと一体も探していただいてるところです。」


鬼から、目を逸らさず後ろにいる少女に話しかける。

自分達のような隊服を身に付けていない鬼殺隊など聞いたこともない少女は尋ねた。


「あなたは?」


「日神楽桜華。耀哉様の知人とでも言いましょうか。

そして、今、鬼たちは血眼でわたしたちを探しているはず。いいエサでしょう?

ここはお任せください。」


少女が戸惑うがそれも当然である。

隊服を着用せず袴姿。刀ではない、見た目は武器ではなさそうな扇子を使う者など聞いたこともなかった。

でも、明らかに自分の手には負えない相手で言われるまま引き下がった。


「あなた、薬品の匂いがします。医術の心得があるのなら、怪我人の手当てをお願いします。」

鬼に見えぬように少女に何かを手渡し、首をかしげた様子を見て、桜華は自分の耳と少女の耳を指した。


意味が解った様子の少女は大事そうに受け取ったものを両手で包む。

そして、「はい!御武運を。」と言って駆けていった。


少女が立ち去ったのを確認すると、鬼"颪"に向き直る。


「颪。鬼舞辻無惨がわたしと猗窩座をお探しなのでしょう。

そして、わたしの名が知れたということは、黒死牟もあまりよい状況ではないとお見受けします。

わたしはあの時、生家一族と共に彼に消されるはずだった存在だから…。」


「拙者からは何も申さぬ。ただお主を生け捕りに手土産として献上するのみ。」


「では、こちらも、あなたを滅し、これ以上その魂に罪を重ねさせぬようにいたしましょう。」




両者とも表情は変えず、ただ間合いを取りながら静かに構え、相手を見定める。


桜華は静かにホォォォと呼吸音を闇月夜に響かせた。

/ 495ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp