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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第9章 月詠の子守唄















赤い満月の夜だった。


「御父様……」

なぜそんなに、悲しい顔をして月を眺めるのですか?
と聞きたかったわたしは、

父の横顔にある悲しい瞳が、何かを思い浮かべているようで聞き出せなかった。

子どもながらに心配でずっと見つめていると

泣きそうな目で優しくわたしを見つめて頬を撫でた。


「桜華……。おいで。」

小さなわたしを膝の上に乗せて、父はまた空を仰いだ。

泣いているのだと思った。

わたしに見られぬようにしているのだと気づいた時、ぽつりと呟いた。


「兄上……。」


父には姉しかいない。そして、その姉も父と歳の近い親戚も皆元気だった。


あまりに消えてしまいそうだった儚く壊れてしまいそうで何も言えなかった。



ただ消えてしまわぬよう、腹に巻かれた優しい腕にしがみついた。


ねぇ、御父様……



あの時、あなたの心にあったのは



ずっと昔に置いてきた、優しいそのお心が故の深い傷なのだと今は解るのです。




そして、わたしの魂の奥に


忘れ去られた何かが


思い出してくれと疼くのです。




御父様、知っているのでしょう?



わたしは、

御父様の

わたしの

何のために

この命を、肉体をもって生まれて来たのですか?


教えてください………










御父様………。























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