第8章 魂の雪蛍
男が気を失ったのは、ほんの一瞬のこと。
すぐに起き上がり、
男は自ら"鬼"にした者たちを精神支配下で探した。
"逃れ鬼"が出ていないか確かめた。
(猗窩座………なぜだ!なぜ、あの化け物が出てきてあの鬼のものだけ…………)
支配下で強く感じるはずの上弦の全て。
反逆者を匿うようにテレパシーを遮る女の元にいても"生きてて鬼である"という事実が解る程度の弱いテレパシーは感受していた。
それが"あの男"の斬擊が蘇ったことで消えたのである。
しかし、いくら答えを探そうとも、男には心当たりがなかった。
意味も理解しがたかった。
しばらく呆然としていた男は
次第に青筋立って狂喜の笑みを浮かべた。
(なぁに、やることは、初めから決まっている。)
そして男が鬼を産み出したときに繋いだ意識の繋がり全てに大きな声で呼び掛けた。
「猗窩座と日神楽の生き残りの娘を追え!!
連れてこい!!
私の目の前で八つ裂きにしてくれる!!」
両手を高々と闇月に伸ばし、おぞましい笑みを浮かべ
先ほどの恐怖から逆上するほどの闇深く笑う声が
精神支配下の鬼たちを苦しめる程
闇深く響いていった。
苦し紛れに鬼たちは一斉に
男に答えた
「「「御意!!」」」
主からの細胞への呼び掛けが収まると、
鬼の始祖、直属の配下で、全ての鬼の上に君臨する十二鬼月は
それぞれの手段で動き始めた。
ただ
一人の侍の男を除いては……
(一瞬………恨めしい……あやつの気配を……
無惨様から感じた………。
なぜ今、猗窩座が消えたのだ……!
解らぬ……
今何が………
起きたのだ…!)