第8章 魂の雪蛍
「刀身は黒と相成りました。日の呼吸の継承者。正しく日神楽に相応しい色でございます。」
巧一のその言葉に皆が手をついて頭を深く下げた。
「おめでとうございます」
すると、刀を握りしめたまま、スッと狛治が立ち上がる。
「日神楽の名を背負った今、こんなどうしようもない俺でも家族だと言ってくれたみんなに、言っておきたいことがある。」
皆が、狛治を見た。
「桜華に出会うまで、俺は人を襲って食って気が遠くなる年月で、何千何万という途方にもない人間を殺めてきた。
その前に人間だった頃も大事な人を守ると言いながら結局は人を苦しめたり、自分が妬まれ逆恨みから大事な人を巻き込んでしまって、鬼になる直前も自暴自棄になり人を殺めた。
こんな野蛮な人間でも、こんなにあたたかく迎え入れてくれたことは、本当に勿体ないくらい嬉しかった。」
「狛治……」
一度、桜華に視線を移し、優しい眼差しを向けた。
そして、また前を見て続ける。
「これからも俺は、自分がやってきたことの重い罪を背負って生きていく。もう二度と目をそらさない。
そして、恩に報いるためにも、今いてくれる大事な人たちを守るためにも、
日神楽の名の下で桜華と、細手塚の家族と共に
鬼舞辻無惨を倒し、鬼のいない世の中にする。」
「それが、俺の、誓いだ。」
その場にいた皆が、時が止まったように静まったまま。
でも、皆が優しい気持ちで狛治を見た。
桜華は、感極まって涙を堪え、うんうんと頷いている。
「狛治さん、俺は、やっぱりあなたが桜華様のところへ来てくれて嬉しい。
俺たちみんなが家族だ。」
「悟さん……。」
「あぁ。細手塚と日神楽の男だ。狛治さん。わたしもあなたを息子の一人として御武運とご多幸を願わせていただきますよ。」
「巧一さん………。」
明子が満面の笑みで手を叩き立ち上がった。
その場は拍手の暖かい雨音が響き渡るようだった。