第8章 魂の雪蛍
「日神楽 狛治。あなたを当主であるわたしの夫として、正式に日神楽家に向かい入れます。
共に、宿命、運命を享受し切り開くこと、ここに今一度、お約束いただきとう存じます。」
「日神楽 桜華。俺は生涯君の夫として、その約束を守り通すことを約束する。」
狛治は桜華をい抜くように見つめその意思の強さを見せつけた。
短い言葉で再度交わされた約束は、
正式に夫婦として
これから先の鬼殺の運命を
夫婦として共に切り開く覚悟を確かめるに十分な強さを持っていた。
「目出たく……! ここに、お二方は夫婦と相成られました!」
二人は、巧一と朱音、その後ろに並ぶ一族に深く頭を下げる。
場は細手塚一家のあたたかい拍手で包まれる。
一度は途絶えたかに見えた日神楽の血筋。
奇跡的に生き残った本家の長女である桜華が、狛治と共に日神楽家の旗を掲げるという特別な日。
再出発はささやかすぎるものではあるが、二人にとっては暖かすぎると感じていた。
続いて行われる"刀剣授与、色変わりの儀"
次期棟梁になる巧郎が狛治と巧一の間に日輪刀を包んだ布が置かれた三宝を置いた。
それを桜華は立会人として見守るために後ろへ下がる。
「続きまして、"刀剣授与、色変わりの儀"執り行います。」
口上のあと刀をはじめて握りしめ、目の前へと突き出した。
対の鎌にもにた刀身。
刃元からぐんぐん漆黒に染まっていく。
その美しさに巧一と朱音は、幼き頃の前代表の色変わりの儀式の様子と重ねていた。
そして、色が変わった己の対の刀を見て密かに口角をつり上げる。
(雄治さん。必ず強くなって、桜華と共に鬼がいない世を目指します。)
一度目を閉じて、もう一度強い眼差しで刀を見た。
(みんな、ありがとう。生かされた分、精一杯世のために尽くします。見ていてくれ………。)
先に命を散らし、己を人に変えた全ての者たちを思って、刀二つを握りしめた手を胸に当てた。
その様子を見て、優しく目を細める巧一は、仕切り直して皆に目をむけた。