第8章 魂の雪蛍
次の日の夕刻。
空が茜に染まる頃、
いよいよ日輪刀が狛治の元に渡り
"刀剣授与、色変わりの儀"
並びに、
"日神楽家籍入れ誓盃の儀"
が行われた。
籍入れの儀は、朱音が二人のためにとっさに思い付いたもの。
婚礼と言うよりは籍入れし、生涯日神楽家の名を背負い当主を支え続けるという狛治の覚悟を形に残してやりたいという気持ちを儀式にしたのだ。
そして、第二の人間としての人生への生きるという門出にその背を押してあげたいとも思っていた。
畳20上以上の神棚だけの屋敷内の道場にて、それは執り行われた。
上座に主役の二人
そして二人と向き合うようにして、巧一と朱音が座る。
少しはなれたところに他の細手塚一同も袴や晴れ着に身を包んで巧一、朱音の後ろに並び両手をついて頭を下げていた。
「籍入れ誓盃の儀礼、これより執り行います。お立ち会いの皆様、よろしくお頼み申します」
その横に白木の台が置かれ、酒、徳利と盃、盛塩、鯛と縁起物が並ぶ。
桜華と狛治は、祭祀の衣装として、
黒地に金の袖口で日の呼吸の紋様を紅葉色、月の呼吸の紋様を菖蒲色とした柄をした尾の長い狩衣に烏帽子姿だ。
「これより、日神楽 狛治様の、日神楽家籍入れ誓盃の儀及び、刀剣授与、色変わりの儀を執り行います。
つきましては日神楽 桜華様、狛治様の鬼殺の武運を祈り、本日、僭越ながら棟梁 細手塚巧一が口上を述べさせていただき取持人を細手塚 朱音が務めさせていただきます。
なお立会人は、細手塚朱音、そして見届け人に後ろに控えます、細手塚一同により執り行させていただきます。」
ーーー略儀にて
妻となり日神楽家38代目当主となった桜華が下した盃を、朱音を介して狛治に渡し交わした。
狛治は盃の酒を飲み干すと盃を懐紙に包んで懐に納めた。
そうして酒を、また別のふたつの盃に注ぐと、下座に列座する家族と呼びあった細手塚一家にまわす。
上座から下座へ、そこで盃を交わし、再びふたつの盃を上座にまわしていく。
交盃。最後に盃を重ねて、作法にのっとって一同手締めをした。