第8章 魂の雪蛍
俺は戦闘において、桜華を甘やかしたくない。
それは桜華だって、俺に甘やかされるようなことはされたくないだろう。
それに、戦いは、今の俺にでもついてこれる。痣もある。
下弦が2~3体束になってかかっても、一人で倒せるだろう。
桜華は凛々しい顔で俺を見て
「勿論でございます。」
と首を縦に振った。
「随分と頼もしくなられましたな。お三方の顔合わせの日が待ち遠しい。
なぜか、産屋敷は、まだあなた方と顔をあわせることは先になりそうだと申しておりました。
おそらく、あなたと信頼関係をしっかり構築してからだとお考えなのでしょう。」
「俺は鬼だった。そして一般の人間も鬼狩りも沢山殺してきた身だ。
そういうのも当然の事だろう。」
記憶にはそのときの様子が鮮明に甦る。
吐き気がするほどおぞましいことを
よくもまぁ何百年もしてきたものだ。
産屋敷耀哉という男。
鬼舞辻と違った狡猾さがある。
だが、頭のいい使い方をしているのは産屋敷の方だ。
俺のような者でも、あいつを産み出した血筋の日神楽家も使えるものは、"同じ目的を持つ同志"として巻き込んでいく。
そして、力による支配とは全く正反対のもので統率している。
だが、鴉のいうまだ会う気がない理由は別のもののような気がする。
まぁ、いい。俺がやることは、
大事な人たちの命を守ること。
そして、桜華の手助けをし、支えとなることだ。
日神楽の名を名乗るからには
その本懐を、真の目的を桜華と共に果たすまで。
それだけなのだ。