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鬼ヲ脱グ【鬼滅の刃】

第8章 魂の雪蛍



暗がりの中に身を落としながら過去の俺は膝を抱えたまま俺に背を向けている。


「それは過去の俺が決めていい事ではない。


俺が命がある限り、俺を必要としてくれる人がいる限り、どんなに過去失敗していようと、立ち直りもせずずっと下を向いていることは許されない。


恋雪さんも師範もも、そして、親父も、

さらには、桜華の父親も他の家族も

俺がこれからも生きていく事を望み、幸せであることを祈ってくれている。

何の見返りもなく、強い愛で俺の事を信じてくれるのに、生きている間それに抗う事なんて、

俺にはできないんだ。」



俺は目の前にいる過去の俺の背中に強く言った。


目の前の過去の俺は、再びこちらを向く。



『馬鹿だよな。アイツら....。何度失敗しても諦めてなんてくれないんだ。

信じて心配そうな目でいつも見ている。立ち直り、再び立ち上がる事を望んでいる。』



吐き捨てるように言うその声は、決して馬鹿にしていっている様子ではない事を俺自身は知っている。

自分を周りの期待から楽にしてくれと言っているようにもとれた。

そして、目の前の過去の俺は真っすぐに俺を見てこう聞いてきた。



『お前は、俺とどう違うんだ?』


睨んで見上げるその目は、猗窩座の俺を彷彿させるくらい鋭い。

試しているんだと思った。

今の俺の覚悟を……。


「俺自身、何も変わらない。

ただ、桜華が桜華の周りにいるみんなが、俺の選択を間違わないように導いてくれる。

支えてくれるんだ。

そして、教えてくれるんだ。

自分の人生を自分の足で生きていく事
自分自身を信じて前を向いていく術を。」



目の前の俺の表情が少し和らいだ。
その場所に少しだけ光が差した。

でも、それでも、彼の疑う目は晴れていない。



『身分も違うんだぞ。相手は元武家で大商人の娘だ。ついていけるのか?』


投げ掛けられた問い。


そうだ。彼女の家柄は表向きでも、鬼殺の世界でも名家だ。
社会の底辺で泥水をすすりながら生きてきた罪人に落ちた自分とは雲泥の差がある。

心だって成熟している。

でも....

そんなの関係ないだろ。
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