第8章 魂の雪蛍
堪らなく溢れる幸せを二人で噛み締める瞬間が
堪らなく愛おしいからどうしようもない。
暫く、抱き締めあって甘ったるい時間を過ごし
日が上りきる前に夜釣り小屋を出た。
屋敷に戻り、いろいろ身支度を整えて、皆が作業する作業場へ向かった。
人間に戻ったと報告するために。
最初に気づいたのは、朱音さんだった。
わたしたちの様子を見て、何かを悟り気づいたのか
驚きの表情でゆっくりと近づいてくる。
「え、……もしかして。」
「案外早く人間に戻れました。」
少し照れ臭そうに、後頭部に手をやってそう告げる。
「じゃぁ……、」
「はい。そう言うことです。」
何かを示しあわせてたのか、わたしの左手を掴んで見せつけた。
朱音さんは、涙を流してわたしたち二人を抱き締めた。
最初にわたしの生存を喜んでくれたときも抱き締めてくれた、母のような温もりが、香りが涙を誘う。
自分の子どものようにそうして祝福してくれるのが、朱音さんたちが言ってくれてる"家族"のようで嬉しかった。
状況を察して、みんなが集まってきた。
「狛治さん……、桜華さん……」
「よかった……。ホントに、良かった……。」
みんながわたしたちを涙を流して祝福してくれた。
外は今日も太陽がギラついて、
遠くから、亡くなったわたしの家族もそこで
優しく見守っているような気がしたの。
御父様、本当に有り難う。
あなたがわたしのために残していたものに包まれて
力強く羽ばたいていけそうです。
心のなかで
今は亡き父に
そう呟いた。