第8章 魂の雪蛍
小鳥のさえずりと、けたたましく鳴き始めた早起きな熊蝉の鳴き声で目が覚めた。
青空はまだ暗さを残して、部屋に明るさを届けている。
狛治に頭を抱かれた状態らしく、目の前には強靭で美しい彫刻の胸板が規則正しく呼吸で動いている。
光が注いでくる窓に向かって手を翳した。
薬指には昨日受け取った、リングの宝石が光を集めて光を放っている。
綺麗だと思った。
昨日戴いた、花束のようにたくさんの言葉の贈り物を一つ一つ思い出しては、
身悶えるような幸福に思わずにやけてしまう。
狛治の顔が見たくて、ずりずり這い上がってみた。
人肌で陶器のように艶やかな色をした頬は血色も人らしくなっている。
その頬に、左手を滑らせる。
線がかかれていた跡は綺麗にない。
紅梅色をした長くてふさふさした睫は、触れてみると硬い。
頭髪に触れる。
男性らしく硬い髪質だけど、全体的にふわふわだ。
ガシッと手首を捕まれる。
同時にゆっくりと瞼から赤黒い瞳が覗き、目があった。
「おはようございます……。」
自然と溢れる笑みは、幸せの象徴。
「あぁ。おはよう……。」
そう言っては、掴んでた腕ごと抱き締めなおしてわたしを閉じ込める。
嬉しくて腕を回した。
形のないものだけど、契り言葉を交わし体を深く重ね、この人はわたしと同じ姓を名乗る夫になってくれた。
そう思うと、嬉しさと恥ずかしさで、また、にやけてしまう。
「何をにやけている?」
「嬉しいんです。今、どうしようもないくらい…。」
そう言うとわたしを抱く腕に力が入って、頬を頭にすり付けるようにしてきた。
「俺も同じだ。」
「ふふっ、くすぐったい。」
そうやって身動いで、狛治と目があった。
嬉しそうに、優しく微笑んでる顔が綺麗で
思わず心臓がトクンと高鳴った。
何のしがらみもない心から溢れた純粋な笑顔。
初めて見た……。
「愛してます……。」
気づけば、そう呟いた。
狛治は一瞬止まって目を見開いたけど
すぐ表情を戻して、愛の深さを滲ませる。
「あぁ。知ってる。」
そう言って、髪を撫でて口づけてくる。